コラム
花柄のバンダナ①
2025.10.24
ある日の朝、木枯らしが吹いていました。こんな日は患者さんも少なく、街の小さなクリニックの待合室はがらんとしていました。午前10時、私は小学4年生の女の子と、そのお母さんを待っていました。女の子の髪の毛や眉毛が抜けてきていて、原因がストレスではないかと受診されることになったのです。
時間ぴったりにやってきた親子。お母さんが「今日はよろしくお願いします」と丁寧にあいさつすると、女の子も慌ててコートを脱ぎ、きれいにたたんで椅子に置き、はっきりとした声で「今
日はお世話になります」と頭を下げました。
(なんてお行儀のいい子…。もしかしたら“いい子すぎる”のかもしれない)と感じました。
診察の前にお母さんとお話をしている間も、女の子は身じろぎもせず、椅子にきちんと座っていました。頭にはかわいい花柄のバンダナを帽子のようにかぶって、お母さんをちらちら見上げています。
学校は楽しく、友だちもいて、いじめもない。妹もかわいい。ピアノは大好きで、お母さんから習っている。他のおけいこ事も楽しんでいて、特に困っていることはないそうです。
医師が「毎日スケジュールいっぱいで忙しいね。少し休んでみない?」と提案すると、女の子はお母さんの顔を見てから、小さな声で「ピアノとバレエ」と答えました。
その後、お母さんはカウンセリングを受けながらAP講座を学ぶことに。女の子は若い臨床心理士が担当し、親子それぞれの治療が始まりました。