コラム
選択させることの大切さ
2024.12.13
玄関のチャイムがなった。ドアを開けると、友だちと遊んでいるはずの3歳の息子が立ってい
た。側には駄菓子屋のおばさんがいる。おばさんは言いにくそうに「あの~、うちのアイスを黙っ
て食べちゃったんだよね~」といって、息子を見た。「黙って食べたって、それって、泥棒したっ
てことですか?」私の口調はキツくなる。「・・・。あまり怒らないで下さいね。昔、うちの息
子も同じ様なことしたのよ」顔見知りのおばさんはそう言うと店に戻っていった。
「ママ、ごめんなさい」と繰り返す息子に「うちにもアイスがあるのにどうしてお店のアイスを黙っ
て食べちゃったの?」と聞くと、息子は「違うアイスが食べたかった」と言った。
その頃の私は「子どものおやつは手づくりで!」と決めていて、アイスも手づくり。親の作る
手づくりが子どもにとっては一番安全!。これも親の愛情だと思い込んでいた。子どももそれで
満足しているはずだと思っていた。でも、違っていたんだ。
何が違っていたのか。私は一晩中考えた。そして気づいた。今まで子どものためによかれと
思って、一方的に与えるばかりだったけれど、もしかしたら押しつけていたのかもしれない。こ
の子は自分で好きなものを選びたかったのではないだろうか。自分で選んで買いたかったのかも
しれない、と・・・。体に良いものを食べさせたい一心で、私は息子に「自分で選ばせること」
を何一つしていなかったのだ。
次の日、嫌がる息子の手を引いて、二人でお店に謝りに行った。そして息子に「今日は自分で
好きなアイスを一つ買っていいよ」と言った。うつむいて小さくなっていた息子は一気に元気に
なった。そして嬉しそうにアイスを選びはじめた。(文責:野中利子)