コラム

信頼関係を築くはじめの一歩

2025.07.04

私が初めて子どもを育て始めたとき、親になったこと自体がすごく大きなプレッシャー
に感じられました。「この子をちゃんと育てなきゃ!」と思うと、つい肩に力が入ってし
まい、毎日緊張して子育てをしていたような気がします。正直、子育てを楽しむ余裕なん
て全くなかったですね。

それでも、毎日わが子と過ごしていると、少しずつ小さな変化に気づき始めました。娘が
機嫌のいいときに「あ~」「う~」とお喋りしたり、私が近づくと手足をバタバタ動かし
て、まるで「嬉しいよ!遊んで!」って言っているみたいだったんです。そうなると、私
も嬉しくなって優しく声をかけながら、ふたりでボールを転がしたり、起き上がりこぶし
で遊ぶことがだんだん楽しくなっていきました。すると、毎日の育児が「大変だな~」か
ら「楽しい!」に変わってきたんですよね。すごく嬉しい気持ちを思い出します。

授乳のとき、赤ちゃんにとって大切なのは、母親の優しいまなざし、温かい肌、そして
安心できる声かけ、気持ちのいいオムツ。これらは全部、赤ちゃんにとって「心地よさ=
快感」に繋がります。心地よい体験が続くと、赤ちゃんはこの世界に「安心感」と「信頼
感」を持つようになります。この安心感が、その後の心の発達や人格形成、人間関係の基
盤になっていくんですよね。このように、乳幼児期には「安心して甘えたい」「愛された
い」「信頼できる関係を持ちたい」「気持ちを理解してほしい」という愛着欲求が満たさ
れることが大切なんです。

小児科医であり精神分析家のウィニコットは「ほどよい応答性のある母親が望ましい」
と言っています。これ、すごく大事な言葉ですよね。「完璧にしなくちゃ!」と自分を追
い込んでしまう気持ちもわかりますが、「ほどよい応答」で大丈夫だよって言われると、
少しホッとします。「応答性」というのは、赤ちゃんの動きや表情を見て、「あ、嬉しい
んだね」「元気だね」とちゃんと反応してあげることです。この親子のやり取り(サーブ
アンドリターン)が、赤ちゃんの脳の発達を助けるんだそうです。

毎日、ほどほどに応答してあげることで、赤ちゃんは「この人は信頼できる」「安心で
きる」と感じて、愛着形成が進んでいくんですね。そして、この応答性は赤ちゃんの時期
だけではなく、子どもが成長してからもとても大切なことなんです!

 

(文責:野中利子)

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