コラム

「まじめな子」に忍び寄る悲劇

2025.08.01

「しつけ」は子どもの成長や社会生活に欠かせないものです。しかし、東海女子大学の長谷川博一教授は「犯罪を犯した子どもの多くは、きちんと育てられた子どもだった」と指摘しています。

特に目立った問題もなく、成績も良く、親の言いつけを守る「まじめないい子」が、思いもよらない事件を引き起こすことがあるのです。

あるとき、15歳の少年が家族を殺してしまったというショックな事件がありました。

東京では両親を、福岡では兄を殺したのです。家族の関係は親密であればあるほど、もしこじれると修復が難しくなることがあります。

他人なら関係を断つこともできますが、夫婦や親子、兄弟などの家族間では、我慢を強いられることが多く、限界を超えると怒りが爆発してしまうことがあるのです。

そして、「まさかあのまじめな子がそんなことをするなんて」と驚くことになるのです。

どの親も「わが子のために」と一生懸命育てていますが、時にはその「我慢が美徳」という価値観が子どもの心に重くのしかかることがあります。

日本の文化には、甘えを許さない風潮がありますが、実は、誰かに甘えられることで安心感を持ち、自分や周りを信頼できるようになるのです。子ども時代には、心から甘えることが大切だと私は思います。
家庭は、子どもにとって一番安心できる場所であるべきです。しかし、親が過度に厳しいと、子どもは甘えられず緊張し続けることになり、結果として、親の顔色をうかがい、じつは自信がない子どもに育ってしまいます。

あるいは、親の期待に応えようとして、表向き「まじめないい子」を演じ続けることになります。

「甘えさせること」と「しつけ」のバランスは難しいですが、子どもが自由に選択できる環境を提供し、その中で責任感や自制心を育むことが大切です。

「うちの子は素直でいい子だから手がかからなくて助かる」と思っているあなた。子どもとの関係を見直してみることをおすすめします。

「いい子」ほど、意外に問題を抱えていることがあるのです。

 

(文責:野中利子)

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